靴磨き
「お客さん。それで……なんで靴磨きなの? って思っていますでしょ?」

「ええ、思ってます」


 ──その昔、帝国大学出という異色の靴磨きに磨いて貰ったことがある。

 戦前には軍用艦の設計を行っていたようで、鉄板から部品に落とすために、曲線の寸法を計算する専門家だったそうだ。

 それがどういう経緯で靴磨きになったのかはわからない。

 しかし、国賓級が宿泊するホテルに構えていた為、外国の有名人や、政府の要人たちの靴をも磨いてきた人物だった。


 残念ながら、現在は故人となったが、今目の前で磨く彼を見ていると、出来栄えを比べるのが、楽しみでならなくなった。

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