桜花~君が為に~

布団から飛び起きる
辺りを見渡すと
そこは先ほどまで見ていた朱に染まった景色ではなく
いつもと何一つ変わらない自室だった

深呼吸をして
荒くなった息を落ち着ける
再び力を抜いて布団に倒れこんだ

「夢…か…」

小さく呟く

それにしても、嫌な夢だ
新撰組の皆が殺されるなんて…

瞳を閉じれば今も鮮明に瞼の裏に映される
朱に染まった視界と
足元に散らばった
浅葱色だった羽織を紅に染めた隊士達

笑っているのに笑っていない
血の滴る刀を持つ愛しかった存在

「山南さん…っ」

両手を目の上に被せ
優しかった彼の名を呼ぶ

「貴方を殺したのは…烈ですか?」

返ってくることのない問いを問いかける

山南が烈の名を知っていた所為か
かつて愛しかった…いや今でも大切な彼が
大切な愛しい者を奪う
そんな最悪の事態しか頭に浮かばなかった

「……っわかんないよっ」

自分はどうすればいいのか
烈を探すべきなのか
それとも今までどおりに生きていくべきなのか
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