桜花~君が為に~
ぎゅっと拳を握り唇をかみ締める
その時…

「悠輝。起きてるか?」

襖越しに藤堂の声が聞こえる

応えずにいると
藤堂は「入るぞ」と言って、ゆっくりと襖を開けた
襖によって遮られていた光が部屋の中へ
藤堂と共に入り込んでくる

そっと目の上に被せていた手をのける
横目で彼を見た

「やっぱ、起きてた」
「…女の子の部屋に無断で入るなんて最低」

満足そうに笑う藤堂に向かって冷たい言葉を浴びせる

「こういうときだけ女に戻るとかずりぃ~」

不貞腐れる藤堂に
悠輝は苦く笑った

「冗談。起こしにきてくれてありがと」

礼の言葉を口にした
それから起き上がり布団をたたむ

「えっと…着替えるんだけど…」

寝間着についたほこりを軽く払いながら
部屋の中央に座り込んでいる藤堂に言葉を投げかける
すると彼は…

「えっ…あ、いやっごめん!!!」

顔を真っ赤にして
すぐに立ち上がり脱兎の如く部屋を出て行った

「…そんな、急がなくてもいいのに」

藤堂が出て行った後を悠輝は愛しそうに見つめ
開け放たれたままの襖をしまった
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