桜花~君が為に~

閉めた襖に額をつけるような形でもたれかかる
自嘲を含んだ笑みを見せた

元気そうでよかった
いや、実際にはきっと元気ではないのだろう
山南と藤堂は同門で
兄弟のような間柄のような物だった
だからこそ、山南が殺された今
もっと落ち込んでいると思ったが

彼は笑っていた
泣き腫らした目で

「ほんと、ありがとう」

瞳を閉じる
しばらく閉じたままにし
それからゆっくりと再び瞳を開いた

先ほどまでの笑みとは違う
鋭い瞳になる

「安心してください。山南さん
貴方の仇は



私が打ちます」

それが例え
愛しい人であったとしても



「よしっ」

寝間着から袴に着替え、髪を結う
頬を一度だけ両手で叩いてから
襖を開けて、朝餉を食べるいつもの広間へと歩みを進めた

廊下を歩いていると
平隊士の皆が朝稽古の後なのだろうか
汗だくになった姿で挨拶をしてくれる

そんな彼ら一人一人に答えながら
悠輝は少し早足で廊下を進んだ
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