桜花~君が為に~

第二十四話


「ねぇ…悠輝。君は忘れてしまったの?
あの日の憎しみを…」

暗い部屋の中に一つの蝋燭の灯りが燈る
闇に混ざるような漆黒の髪を持った少年が呟いた

隣にいる少女
目の前にいる沢山の人が彼にひざまずいている
唯一、彼の隣に立つ青年と顔をあわせ
微笑んだかと思うと

「晋作。唯…皆
僕達の姫を取り戻そう」

そこまで言って少年は一度言葉を切って目を閉じる
浮かぶのは愛しい彼女の顔
再び目を開け睨みつけるように前を見据える

「あの幕府の犬どもの手から」

恨み
怒り
憎しみ

それらを全て込めた言葉を口にした

「今、迎えに行くからね



     悠輝」



「――――っ!!!!!」
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