桜花~君が為に~
沖田はどんな表情をしているか
気になった悠輝はそっと物陰から顔を出した


彼は
沖田はただ…




笑っていた


「そうですか」
「そうですかじゃない。今すぐここから離れて療養するべきだ」
「嫌です」

松本の言葉に
沖田は尚も笑って答えた
さらに言葉を続ける

「ここから離れるなんてできません
だって…ここが…新撰組が僕の存在する理由だから」

僕の存在理由を奪わないでください。
そういった沖田の表情は少し悲しそうだった
そんな彼の様子を見た松本は深いため息をつく

「わかった。しかし、これからはたまに様子を見に来る
言うことも聞いてもらうぞ」
「は~い
あ、でも皆には言わないでくださいよ
心配されるの嫌いなんです」

肩をすくめて笑う
そんな沖田の様子を見て
松本は苦く笑った
それから、残る隊士の診断を行うため
その場を後にする

一人残された沖田はというと

「悠輝。いるんだろう…出ておいで」

誰もいない空間に向かって言葉を発する
< 108 / 152 >

この作品をシェア

pagetop