桜花~君が為に~
第二十五話
桜が舞う様が好きだと 貴方は言った
だから私も 好きになった
今思えば
貴方に好きだと言ったことはなかったね
少し、恥ずかしかったんだ
貴方が与えてくれた愛しさを
私は何一つ返せなかった
もし、もしね
あの時、想いを伝えることができていたのなら
未来は変わったのかな?
沖田がいなくなった後
悠輝は一人その場に立ち尽くしていた
自分はまだ、悪夢の中にいるのだろうか
彼が病に罹っているなんて信じられない
いや、違う
最初からわかっていた
ただの風邪じゃないことくらい
わかっていた
ただ、信じたくなかっただけ
「―――…っ沖、田さんっ」
彼の名を呼ぶ
ずっと堪えていた涙が溢れた
その場に泣き崩れるように
悠輝は地面にしゃがみこんだ