桜花~君が為に~


どうして
私の大切な人は皆
私の前からいなくなってしまうのだろう
父も
烈も
山南さんも

私はただ
守りたいだけなのに
私の存在自体が皆を危険にさらしている

「ここにいたのか悠輝
…どうした?そんなところに座り込んで」

よく知った声が耳に届いた
急いで涙を拭う
それから立ち上がり笑顔を作った

「何でもありません
ただ少し疲れただけです」

そういって振り返る

やはりそこには斎藤の姿があった
悠輝の言葉を聞いた彼は
納得いかないという風に顔をしかめる

「嘘をつくな」
「ついてませんよ
それより私の何か用ですか?」

笑顔のまま悠輝は
斉藤の言葉を否定し問いかける

そんな悠輝の問いに
斉藤はさらに深く眉間に皺を寄せた

「…松本先生が呼んでいる
頼みたいことがあるそうだ」

しかし彼は
それ以上何も聞かなかった
悠輝に用件だけ伝える
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