桜花~君が為に~

「そうですか
わざわざ伝えに来て下さって有難う御座います


それでは」

一礼して悠輝は松本がいるだろう場所へと走り出す
その時

「待て」
「へ?」

斎藤が悠輝の腕を掴んで
その動きを止める

悠輝は振りま向かずに
その場にとどまった

「俺達は死なない
お前を独りにはしない
だから…


   安心しろ」

斎藤が言い放った言葉に
悠輝は目を見開いた

しかしすぐに笑顔を作り
振り返って斎藤に微笑みかける

「ほんと、何で貴方はいつも無表情のくせに
人の気持ちがわかるんですか」

そう言って自分の腕を掴んでいる
斎藤の手をのけ
悠輝は再び松本の下へと走り始めた


斎藤はそんな彼女の背を見つめながら








「何故解る…か
お前だからだよ、悠姫」







小さく呟いた言葉は風に呑まれ
他の人の耳に届くことはなかった
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