桜花~君が為に~
部屋の外に出て自室へと向かう途中
隊士の皆
それこそ平隊士から幹部隊士
この屯所にいる全員が右へ左へ
刀ではなく雑巾や箒を手に
忙しなく走り回っている
あまりにも見慣れないその景色に
悠輝は目を点にした
「…何、これ」
「おいっ悠輝っ!!!どこ行ってたんだよ!早く手伝え!!」
布団を両手に抱えた藤堂が
悠輝の存在に気づき声をかける
そうは言われても
皆が何故こんなことをしているのか分からない悠輝には
何をしたらいいのか分からず
急いで藤堂の下へと駆け寄った
「ちょ、平助
何これっなんで皆掃除してんだ!?」
「待て、落ち着けって悠輝」
混乱状態になっている悠輝をなだめるように
藤堂は持っていた布団を床に置き
悠輝の肩に空いた手を置いた
「松本先生に屯所が不衛生すぎるって
近藤さん怒られちゃってさ
午後からは屯所にいる全員で
屯所内を大掃除だってさ」
肩をすくめて、藤堂は苦笑した
確かにいつも悠輝が掃除をしているとはいえ
一人では掃除する範囲に限界があった
それに加え
屯所が広くなったり
沖田が隊務をできないことが増え
結果悠輝の仕事量が増えてしまい
なかなかちゃんとした掃除ができなかったのだ
「あーそういうこと
わかった、俺もすぐ手伝うよ」