桜花~君が為に~
長い廊下を
つい先ほど作ってきたばかりの粥を手に駆ける
すぐに彼の部屋に辿り着いた
その場に粥を置いて中にいるだろう沖田に話しかけた
「沖田さん。悠輝です」
「どーぞ」
彼の返事を聞いてから部屋の中に入る
そこには布団の上に寝間着姿で寝転んで
なにやら本のようなものを読んでいる沖田の姿があった
その本らしき物の表紙には
『豊玉発句集』
と書かれている
「また盗んできたんですか?」
内心呆れながら
悠輝は沖田に問う
「いやー皆掃除に熱中してるから簡単に盗れたよ」
何の悪意も感じさせない
無垢な笑顔でそう言い放った沖田を見て
悠輝は軽く土方に同情した
一度ため息のように息を吐く
それから
「ご飯お持ちしました
今度はちゃんと食べてください」
碗に粥をいれ
体を起こしたおきたに手渡す
それから彼の体が冷えないようにと
肩に羽織をかけてやった