桜花~君が為に~
第二十六話
翌年七月
幕府を支えていた将軍徳川家茂が病死
これに伴い八月に長州征伐停止の命が下る
300年揺らぐはずのなかった幕府という大樹が
初めて揺らぎ始めた瞬間だった
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1867年3月
悠輝はいつものように隊士に稽古をつけ
沖田の看病をし
さらに隊務に雑務と多忙な日々を送っていた
この日はさらに伊東に部屋まで呼ばれ
今まさに目の前にいる彼と話しているところだった
「新撰組を抜けて、新しい隊を作らないかと?」
「ええ、すでに幾人かは賛同してくれているわ」
聞き返す悠輝に
伊藤は機嫌良く答えた
部屋の中にいるのは悠輝と斎藤の二人のみ
――…あぁ、これが永倉さんや原田さんが言ってたやつか…
つい先日永倉がぼやいていたことを思い出す
最近伊東が隊士一人一人に新しい隊を作らないかと
誘っている。と…
現に今悠輝はそれに誘われていた
しかし悠輝の答えは決まっている
「お断りいたします」
目の前にいる彼を見据えて言葉をきっぱりと紡ぐ
すると彼は納得いかないという顔を見せた