桜花~君が為に~
しかし悠輝はそれを無視して立ち上がる

「後で後悔することになるわよ」

部屋を出て行こうとする悠輝に伊東は言葉を投げかける
これで、悠輝が考えを改めるとでも思ったのだろうか

悠輝は見下すように伊東を冷ややかな目で見る
それから少し低い声で言葉を紡いだ

「俺はここが好きです
後悔なんてしない、するわけがない」

失礼します
と一礼して悠輝は部屋を後にした

いらついた様子で廊下を歩く
他の廊下と交わるところに差し掛かった時

ドンッ!!


「いっ…」
「うわっ」

誰かとぶつかり後ろに倒れて尻餅をつく
打ったところを抑えながら顔を上げると、そこには




「鉄か…悪ぃ
前見てなかった」



鉄こと市村鉄之助が同じように廊下に尻餅をついていた
立ち上がり今だこけたままの彼へと手を差し出す
市村は戸惑いながらもその手をとった
それを確認してから悠輝は手を手前に引く

「すみません
急いでいたもので…」

立ち上がった市村は深く礼をし
申し訳なさそうな顔をする
そんな彼を見て悠輝は苦笑した
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