桜花~君が為に~
「悠輝~二人と話せた?」
斎藤が去ってからしばらくして
沖田の間延びした声がこの場所に響く
そんな彼の声でようやく悠輝は我にかえった
「沖田、さん…」
小さく彼の名を呟く
沖田は不思議そうな顔で彼女に近づいた。
少しほてっている悠輝の頬を沖田が優しく撫でると
びくっと悠輝の肩が小さくはねた
それをおきたが見逃すはずもなく
「どうしたの?何かされた?」
少し顔をしかめて沖田は問いかける
しかし、悠輝は無言のまま首を横に振った
瞬間
瞳から涙が溢れてくる
それは、斎藤に唇を重ねられたからというものではなく
二人が離れた悲しみと
止められなかった気づけなかった自分の不甲斐なさからくるもの
そのことが沖田にもわかったのだろう
一つため息に似た息を漏らし
苦笑してから泣きじゃくる彼を抱きしめた
そっと、小さい子をあやすように
その背中を優しく撫でてやった。
「すみません、もう大丈夫です」
ひとしきり沖田の胸の中で泣いた後
悠輝はそっと彼の体から離れた
それにしたがって
今まで悠輝を抱きしめていた手も解かれる