桜花~君が為に~

悠輝は着物の袖でそっと涙の筋をなぞって
涙を拭い去ってから
沖田を見て笑った

「斎藤さん。返事は帰ってきてからでいいって言ってたんです。
だから、きっと…帰ってくるんですよね」

なんの返事なのか
とは沖田は聞かなかった

ただ静かに頷いて
彼らの去っていた後を見ていた


今の時代、一度でも分かれてしまったら
もう一度二人が無事で会えるなんて
そんな保障は何処にもない
それでも。

「きっと、そのときには平助も一緒にいて…
だから、寂しくなんてありません。
きっとまたいつか…今までみたいに
皆で冗談言って、笑えるはずだから」

続けざまに言って
悠輝はもう一度笑ったかと思うと
深々と礼をして

そのまま自室へと戻っていった。
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