桜花~君が為に~

土方はその言葉を聞いて
開いていた目を硬く閉じた


「もういいぞ。市村
入って来い」

今度は襖の向こうの人影へと話しかけた

わずかな間をおいて
「失礼します」と返答があったと同時に
静かに襖が開かれる

見えたのは
まだ幼さの残る少年

「今日は、茶をこぼさなかったのか」

ふっと眉間に寄せていた皺を緩めたかと思うと
ほんの一瞬
ほんの一瞬だけ彼に向かって微笑んだ

「そ、そんな俺が毎日
茶をこぼしてるみたいな言い方しないでくださいよっっ!!」

むぅっと頬を膨らませながら

市村鉄之助は
土方にお茶を渡した

「事実を言ったまでだ」
「だーかーらー!!」
「んで、その度に悠輝に迷惑をかける」
「うぅ……」

そんな土方の言葉で
止めを刺された鉄之助は
「ひどいです」と一言呟いてその場にうなだれた


そんな彼の姿に
土方はついに噴出して笑ってしまった
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