桜花~君が為に~


「…」

ようやく咳が治まり、そっと彼を布団に寝かす。

「白湯を持ってきますね」

彼の口元を押さえていた布を手に立ち上がる悠輝を
総司は

「待って、いらないから…傍にいて」

と着物のすそを掴んで呼び止めた。
そんな彼の言葉に
悠輝は反論しようとしたが
彼の顔を見て仕方なくその言葉に従った。

どこか、寂しそうな彼の表情に
嫌な予感がした。

「僕は…幸せだよ。
こんな、可愛いお嫁さんをもらえて…」
「総司さん?」

そっと頬に暖かい彼の手が触れる
その手に、悠輝は自分の手を重ねた。

「有難う。悠輝…
辛かったよね、こんな、いつ死ぬかわからない僕の傍にいて…
でも、傍にいてくれて。有難う」
「何、言ってるんですか
まるで、最後みたいな…」

いやだ、そんなこといわないで
私は、まだ貴方と生きていたい
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