桜花~君が為に~
第五話
池田屋の一件が終り
私達はすぐに屯所へと戻った。
沖田さんのほかにも、
平助が怪我をしたり、他の人も大怪我ではないが怪我をしていた。
皆が治療を受けている間
私はあまり人のこない所で
一人、座り込んでいた。
「沖田さん・・・・」
無意識につぶやいた言葉に
自分自身驚いた。
最初は父さんを殺した沖田さんだけでなく
この、新撰組の皆が憎かった。
だからこそ私は、新撰組の中に入り込み
十分に信頼されたところで裏切って人を殺す。
そのはずだった。
でも、新撰組の皆は温かくて
優しくて・・・・
本気で恨むことなんて出来なくなってしまった。
それでも、父さんを殺した沖田さんは絶対に許せなかった。
許せなかった
はず、なのに・・・・
「悠輝?何してんだ?」
よく知った声が耳に届いた。
「土方さん・・・・」
振り返って見えたその姿に
私は小さく彼の名を呼んだ。
鬼の副長と呼ばれるその人の名を
「沖田さんは?」
「嗚呼、大丈夫だ。命に別状はねぇよ」
その言葉に
ほっと安堵の息をのんだ。
「俺のせいで、沖田さん怪我したんです・・・
こんなの、右腕失格ですよね」
クシャッと前髪をかきあげ、苦く笑った。