桜花~君が為に~
作った粥を手にして
私は沖田さんの部屋の前まで来た。

「お―――――…」

沖田さんと、名前を呼ぼうとして
急いで口を閉じた。
部屋の中から沖田さんの苦しむ声が聞こえたからだ。

きっと、私が声をかけたら、
彼はどんなに痛くても我慢するだろう。
だから、私は声をかけることが出来ない。

「―――…っ」

私は無力だ。
何にも出来やしない

涙がこぼれた。
唇をかみ締め拳を握る。
声を漏らさぬように

何も出来ない自分がもどかしかった。
粥の一つで役に立ててると思った自分が恥ずかしい。



結局私は
あの人のために何も出来ないのか…



「…悠輝?」
「……おき、たさん…」

呼びかけられた声に肩がはねるのがわかった。
ゆっくりと言葉を返す。

すると、
沖田さんは入っておいでと優しい声で言った。
そんな沖田さんの言葉に従い
私は粥を持って彼の部屋の中へと入った。
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