桜花~君が為に~

第八話

沖田の部屋を後にした悠輝は
早歩きで屯所内の廊下を歩いていた。

皆はもうそろそろ夕飯を食べ終えた頃だろうか

そんなことを考えながら
角を曲がったところで誰かとぶつかった。

「…っ」
「あぶねっ」

倒れることを覚悟して
強く目瞑ったが、いつまでも衝撃は来なかった。

「っと、悠輝か。大丈夫か?」
「…原、田…さん?」

閉じた目を開けると
其処には一人の男性が、片手で自分を支えてくれていた。

原田左之助
新撰組十番隊組長だ。
少々短気なところもあるが、優しい性格をしている。

「悪かったな、ぶつかっちまって」
「あ、いえ…確認せずに曲がった俺が悪いんです」

言いながら悠輝は深々と礼をした。
それから、それでは…といい先を急ごうと歩みを進める。
そんな悠輝とともに、原田も隣について歩いた。

「…原田さん?どうかしたんですか?」

彼の部屋はこちらではなかったはずだ。
そう思い悠輝は原田に問いかけた。

「総司の具合はどうだ?」

彼にしては珍しく真面目な声でそういった。
そんな原田の言葉に悠輝は足を止めた。

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