桜花~君が為に~

第九話

調理場に戻り盆を流し台に置く。
近くにおそらく悠輝の分であろう夕食が置いていた。
しかし、悠輝はその夕食には一切手を付けず
駆け足で調理場を出て行った。

途中包帯を取りにもどり
そのまま沖田の部屋へと戻った。



部屋の前まで戻ると
沖田は縁側に腰を下ろしていた。
月明かりに照らされて
白い彼の顔色が、さらに白く見えた。

沖田は悠輝の姿に気づいていないようで
ただ、ぼーっと空に浮かぶ月を見上げていた。

「沖田さん」

何処か儚げで空を見上げる彼が
今にも消えてしまいそうで、
悠輝は耐え切れずに言葉を発した。

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