桜花~君が為に~
「…遅くなってすみません。
藤村悠輝です」
彼の部屋の前まで来ると障子ごしに彼へと話しかけた。
「入れ」
何処か優しい声に
少し安堵し、悠輝は障子を開けて部屋の中へと入った。
そこには、蝋燭に火をともし書物を読んでいる土方の姿。
悠輝が障子を閉めると同時に
土方は悠輝に視線をやった。
座れ、と言われ
悠輝は土方の前に腰を下ろし
まっすぐに彼を見据える。
「…総司のことなんだが…」
「…っ」
沖田の名を口にされ
悠輝の肩が大きく跳ねた。
その様子に気づいたのか
土方は「安心しろ、責めてるわけじゃない」と言って微笑んだ。
そんな彼の言葉に悠輝は無意識に硬く握っていた拳を解く。
「命令と言うか、頼みなんだが…」
「はい、なんでしょう」
「総司の傍に居てやってくれ」
「……え?」
思っても見なかった言葉に
悠輝は驚きの表情を隠せなかった。
沖田の傍にいるのは
当たり前のことだと思っていたし
ましてや、そんなことを土方にいわれるとは
微塵も思っていなかった。
「斎藤と藤堂から聞いた。
あいつ、お前の飯なら食ったんだろ?
…最近総司が飯を食わなくて困ってたんだ」
そういえば
確かに、最近の彼はおかしかった。
食事にもあまり手をつけずに藤堂や永倉にあげてしまう。
それは怪我をおう前の話で・・・
先刻も食欲がないと言っていた。
しかし、悠輝の作った粥だけ
あの粥だけは、米粒一つ残すことなく彼は食べた。
おそらく、それで土方は悠輝に頼んだのだろう。
藤村悠輝です」
彼の部屋の前まで来ると障子ごしに彼へと話しかけた。
「入れ」
何処か優しい声に
少し安堵し、悠輝は障子を開けて部屋の中へと入った。
そこには、蝋燭に火をともし書物を読んでいる土方の姿。
悠輝が障子を閉めると同時に
土方は悠輝に視線をやった。
座れ、と言われ
悠輝は土方の前に腰を下ろし
まっすぐに彼を見据える。
「…総司のことなんだが…」
「…っ」
沖田の名を口にされ
悠輝の肩が大きく跳ねた。
その様子に気づいたのか
土方は「安心しろ、責めてるわけじゃない」と言って微笑んだ。
そんな彼の言葉に悠輝は無意識に硬く握っていた拳を解く。
「命令と言うか、頼みなんだが…」
「はい、なんでしょう」
「総司の傍に居てやってくれ」
「……え?」
思っても見なかった言葉に
悠輝は驚きの表情を隠せなかった。
沖田の傍にいるのは
当たり前のことだと思っていたし
ましてや、そんなことを土方にいわれるとは
微塵も思っていなかった。
「斎藤と藤堂から聞いた。
あいつ、お前の飯なら食ったんだろ?
…最近総司が飯を食わなくて困ってたんだ」
そういえば
確かに、最近の彼はおかしかった。
食事にもあまり手をつけずに藤堂や永倉にあげてしまう。
それは怪我をおう前の話で・・・
先刻も食欲がないと言っていた。
しかし、悠輝の作った粥だけ
あの粥だけは、米粒一つ残すことなく彼は食べた。
おそらく、それで土方は悠輝に頼んだのだろう。