桜花~君が為に~
「………」
「怖いな。悠輝
僕は何も言ってないよ。ね、土方さん」
ちらっと横を見ると
沖田がへらへらと笑いながら顔の横で
ひらひらと手を振る。
「あぁ、俺はもともと気づいていた」
「……」
自分なりには
結構上手く化けているつもりだった。
なのに、二人にばれてしまうなんて…
「じゃあ、女には用がないから…
今回の任務からはずしたと?」
「んなこといいてぇんじゃねぇよ
俺は、ただお前が今朝何を見たのか
しりてぇだけだ」
「今朝?」
そう聞き返したのは
悠輝ではなく沖田だった。
「…あぁ」
先ほどは答えなかったその問いに
土方は静かに首を縦に振った。
しかし、どんな状況だったのかまでは言わない
「答えろ、悠輝」
「…何も、見ていません」
嘘だった
本当は見た
真っ赤に染まった大地を
真っ赤に染まった仲間を
真っ赤に染まった父を
そして、全てを無にした彼らの姿を
悠輝は全て思い出した。