桜花~君が為に~

第十二話

あの日の悪夢
あの日の惨劇

全て


「…っ」
「悠輝!?」

吐き気がする
口元を押さえ
私は畳に片手をついた。

焦った声で私の名前を呼ぶ沖田さん

「…総司。悠輝を部屋に連れて行け
布団に寝かしたら、てめぇだけ帰って来い
俺は忙しいんだ。早くしろよ」
「わかりましたよ」

不服そうな沖田さんの声が聞こえたと思うと
ふわっと体が浮いた。

「おき、たさん?」
「…いいよ、僕に体重預けて」

目の前には沖田さんの顔
どうやら、私は沖田さんに抱きかかえられている状態らしい

そのまま沖田さんは歩みを進めた
近くに聞こえる沖田さんの心臓の音
少し揺れるのがここちよくて
いつの間にか、私は眠りについていた。

「寝ちゃったか…
ねぇ、悠輝。君が起きたとき君は君のままでいてくれるのかな…」

意識が薄れる中
私は遠くに沖田さんのそんな言葉を聞いた。
< 44 / 152 >

この作品をシェア

pagetop