桜花~君が為に~
「……ん…」
目を覚ますと其処は自室だった。
ゆっくりと体を起こす
髪をかきあげると
ふと、自分が涙を流していることに気づいた。
そっと頬を伝う涙を拭いながら
先ほど夢で見た少年のことを思い出した。
「…烈…」
全て
全て思い出した。
私は
この新撰組にとって敵である
長州の…攘夷志士の人間
そして、その幹部にあたる
「行かなくちゃ…」
あの日
確かに私の父は殺された。
そのショックで
私は長州の人間と言うことを忘れていた。
ただ憎しみのままに生きる人として
―――…沖田を。殺せ
心の中にそんな声が響く
ゆらりと立ち上がり
枕元においていた小太刀を取って部屋を出た。
隊士がほとんどいない
屯所内を歩く
皆任務に出かけたんだろう