桜花~君が為に~

「僕を、殺すの?……悠輝」

あの日は避けられた太刀は
沖田の素手によって止められた

手から血が滴り
刃を伝って本来貫かれるはずだった胸に丸い後をつけた。

「…ころす…殺さなきゃ」

光を映さない彼女の瞳
沖田は悲しそうに微笑んだ。

「殺さなきゃいけない
皆殺されたんだ。お前達に」

愛しかったあの人も
ずっと傍にいると誓った人も
大好きな父親も

すべて
この新撰組に奪われた。

「それは、君の本心?」
「…っ!!!」

沖田はそう悠輝に問いかけると
刀を掴んでいた手を離し
一瞬でそれを払いのける

カランと小さい音を響かせて
それは部屋の隅へと転がった

「殺す!!!お前は私がっ!!!!」
「僕を見て、君の目はそんなに陰っていなかった
いつもの悠輝に戻って」

血のついていない左手で
彼女の頬に触れる

そのまま
体を起こして彼女の唇に口付けた。
< 51 / 152 >

この作品をシェア

pagetop