桜花~君が為に~

「…っ」

数秒たってようやく合さっていた影が離れる
ゆっくりと、閉じていた瞳を開けると
目の前には硬直した悠輝の姿が映った。

「沖…田さん…?」
「やっと、戻った」

光を取り戻した悠輝の瞳を見て
沖田は安心したように微笑んだ。
ゆっくりと体を起こし
目の前に座っている彼女を抱きしめた。

びくっと悠輝の体が一瞬はねたが
彼女は抵抗などせず
黙って沖田を受け入れた。

「ごめん、なさい…
私…私…っ」
「良いよ。
あれは、君の意思じゃないんだろう?」
「でもっ」
「大丈夫。僕は死んでないから
君の意思で殺そうとしない限り僕は君に殺されない」

優しく呟かれた残酷な言葉
殺されると言う単語が嫌に耳に響く。
そっと撫でられた手の暖かさに
悠輝は落ち着きを取り戻した

「落ち着いた?」

そんな沖田の問いに
悠輝静かに頷く
すると、ゆっくりと体が離された。
< 52 / 152 >

この作品をシェア

pagetop