桜花~君が為に~
「沖田さん、手がっ」
「あぁ、これ?大丈夫だよ」
「そんなことあるわけないじゃないですか!!!!!」
ふと、
彼の右手が血で滲んでいることに気づき
悠輝は持っていた手ぬぐいを裂いて彼の手のひらにまきつける。
「私、ですよね…
……すみません」
「謝らなくて良いよ
これ、有難う」
再び落ち込んでしまった悠輝に
沖田は巻いてもらったばかりの右手を
彼女の前でひらひらと振り微笑んだ。
「何が、あったの?
まぁ、言いたくなければいいけど」
「明日…
いいえ、幹部の皆さんが集まった時に全て話します
だから今は…―――」
黙って傍にいさせて
次の日
日が昇ってまた沈んだ頃
皆が返ってきた。
それほど目立った外傷は少なく
残っていた悠輝、藤堂、沖田、山南は
安堵の表情を見せた。
長州の過激派浪士たちが御所に討ち入ったこの事件は
後に【禁門の変】と呼ばれるようになる。