桜花~君が為に~

「わぁったよ」

まっすぐ見つめる彼女の瞳に
土方は静かに頷いた。

それを確認し悠輝は再び語り始める。

「俺・・・いいえ
私は・・・長州の、攘夷志士の人間です」

それから
悠輝は全てを話した。

自分は女で
婚約者がいること
その婚約者、そして父を殺されたショックで記憶を失ったこと
そして、父親を殺された記憶だけがのこり
敵討ちのため新鮮組みに入ったこと

自分の目的は新撰組をつぶす事だと


「・・・・・だから、なんだ?」
「え・・・・?」

思ってもいなかった言葉に
今まで冷酷さを保っていた目が崩れる。
ふと、辺りを見渡すと
皆が皆悠輝に向かって微笑んでいた。

「お前が、あっちの人間だってのは最初から知っていた。
俺達を殺そうとしていたのもな」
「でも、君は僕らを殺さなかった」

土方に続いて沖田が言う

殺さなかったじゃない
殺せなかったんだ。

皆があったかくて
優しくて
< 55 / 152 >

この作品をシェア

pagetop