桜花~君が為に~
第十五話
季節は巡る
京どくとくの蒸し暑い夏が終り
涼しい風が少し肌寒く感じられる秋の夜
悠輝は一人自室の前の縁側に腰を下ろし
月を見上げていた。
「・・・・烈」
呟くのは愛しかった彼の名前
今はもう、この世には存在しない
「烈、…烈の仇、取れそうにないよ…ごめんね」
この数ヶ月
近藤を初め藤堂らが江戸へと隊士募集へ行った。
そして、伊東甲子太郎らが新撰組に入隊した。
たった数ヶ月
なのに、新撰組はがらりと変わってしまった。
人数が増えたからとかそんな物ではない
空気からして、変わってしまったのだ。
「ねぇ、前から気になってたんだけど
その烈って誰?」
「へ…?」
突然聞こえた声に後ろを振り返る
其処には、よく知った人がいた。
「沖田さん…」
「ねぇ、誰なの?」
彼の名を呼ぶと
沖田は少し不機嫌そうな声で再び問いかけながら
悠輝の横に腰を下ろした。
「烈は、私の婚約者だった人です」
「………」
沖田は何も答えなかった。
ただ、月を見上げている。