桜花~君が為に~
何故だろう
あの日私はずっと見ていたのに
何もしようとせず、ただ物陰に固まっているだけだった。

怖かったから?
父さんが生きろって言ったから?

「ほら、答えられない。
僕は、そんな君だと思ったからあの日殺さなかったんだよ。
――――・・・悠輝ちゃん」
「・・・え・・・?」

この人、私が女だって事の気づいて・・・

「気づいてたんですか?」
「うん。あ、でも安心して
他の人達に入ってないし、これからも言う気はないから」

押さえつけられていた手を離し開放される。
乱れた服を直しながら彼に問いかけた。

「いいんですか?離して
また殺しにかかるかもしれませんよ?
今、私を殺さなくていいんですか?」
「うん。別に僕を恨んで殺しに来てくれてもかまわないよ
まぁ、おとなしく殺されてやる気もない。
だから、何度だって殺しにおいで、寝込みを襲うのもよし、真正面からくるのもよし
それで僕を殺せたら君の勝ちだ」

彼は笑ってそういった。
そんな彼の笑顔が私を馬鹿にしているようで
私はなんだか恥ずかしくなって部屋の隅に転がっていた小太刀を取って逃げるようにその場を後にした。
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