桜花~君が為に~

「よし…」

お茶を入れ終え
悠輝は盆をもって調理場を出る。
盆の上には湯飲みが三つ並んでいた。

一つは自分にこのお茶を入れてくれるように言った人の分
一つは自分の分
そして、最後の一つは…土方の分

先ほど土方の部屋の前を通りかかったところ
部屋の明かりがついていたので
起きて仕事をしているのだろうと思い彼の分の茶を入れた。

「……沖田さんのこと、土方さんに話したほうが良いのかな…」

土方の部屋へと続く廊下を歩きながら
小さいため息をつきながらそう呟く

最近の沖田の体調は
良いと言えるものではなかった
今日は何とか自分がいなくなるまで我慢できたようだったが
巡察の途中など、我慢出来ずによく咳き込んでいる。


きっと、土方も気づいているはずだ
土方と沖田はよく喧嘩をするが
それはどことなく兄弟のじゃれあいの喧嘩のようなもので
土方が、どれほど沖田を大切にしているか
悠輝は知っていた。

だからこそ、沖田も心配をかけたくないと思い
何も言わずに隠し続けているのだろう


「やっぱり、まだ仕事…してる」

土方の部屋の前まで辿り着くと
やはり彼の部屋には明かりがともっていた。

彼も彼で、無理をしている
鬼を演じ続け、大量の書類の束を一人で減らし続けている。

―――…なんで、新撰組には自分の体を大切にする人がいないのよ…
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