桜花~君が為に~
熱くなってしまった頬を
両手で包むように抑える。
すると、沖田はいつもと変わらない
あの笑顔をみせた。
「あれ?どうしたの
顔、真っ赤だよ~」
「な、何でもありませんっ!!!!!」
からかうように悠輝の顔を覗き込む沖田
そんな彼から悠輝は叫びながら視線をそらした
―――……あれ…?
視線をそらした先に
一冊の本を見つけた。
「なんですか?あれ」
左手で頬を押さえたまま
右手で本を指差す。
沖田はそんな悠輝の指先を追って
その視線が本を捕らえた時…
「あ、それ?
これはね……」
一度言葉を切り、沖田は茶を置いて悠輝の指差す本を手に取る
そして……
「土方さんの句集。豊玉発句集だよ」
何の悪気もない…そんな生き生きとした笑顔でそう言い放つ。
そんな彼の言葉を聞いて、
悠輝は一気に自分の持っていた熱が引いていくのを感じた
―――…あぁ、後で土方さんに言いつけよう。
心の中でそう決心した。
楽しそうに笑いながらぺらぺらとページを捲る沖田を冷たい目で見てから
悠輝は大きなため息をついた。
さっきまでのくらい空気はどこへいってしまったのだろうか。