桜花~君が為に~

熱くなってしまった頬を
両手で包むように抑える。
すると、沖田はいつもと変わらない
あの笑顔をみせた。

「あれ?どうしたの
顔、真っ赤だよ~」
「な、何でもありませんっ!!!!!」

からかうように悠輝の顔を覗き込む沖田
そんな彼から悠輝は叫びながら視線をそらした

―――……あれ…?

視線をそらした先に
一冊の本を見つけた。

「なんですか?あれ」

左手で頬を押さえたまま
右手で本を指差す。
沖田はそんな悠輝の指先を追って
その視線が本を捕らえた時…

「あ、それ?
これはね……」

一度言葉を切り、沖田は茶を置いて悠輝の指差す本を手に取る
そして……

「土方さんの句集。豊玉発句集だよ」

何の悪気もない…そんな生き生きとした笑顔でそう言い放つ。
そんな彼の言葉を聞いて、
悠輝は一気に自分の持っていた熱が引いていくのを感じた

―――…あぁ、後で土方さんに言いつけよう。

心の中でそう決心した。
楽しそうに笑いながらぺらぺらとページを捲る沖田を冷たい目で見てから
悠輝は大きなため息をついた。

さっきまでのくらい空気はどこへいってしまったのだろうか。
< 67 / 152 >

この作品をシェア

pagetop