桜花~君が為に~

土方の言葉を遮り書類の束を抱えたまま
笑顔でそう言い放つ

確かに
悠輝が土方の仕事を奪うのは過去に何回もあった出来事だ
それも、それは決まって書類が溜まってきて土方が寝れていないときで…

そんな悠輝の優しさを知っていたから
今までは何も言わず黙っていた
でも今は…

「無理すんな
てめぇも寝てねぇだろうが」
「大丈夫です。
土方さんほどではありません!!!」

わざと声を低くして言い放った言葉も無駄になり
悠輝はこれ以上ないほどの笑顔を見せて
空いている左手で襖を空ける。

「おま……っ」
「あ、そういえば、沖田さんが
土方さんの句集を持ち出していましたよ」

止める土方を無視して
悠輝は思い出したようにそれだけ言って
それでは失礼しますと言い残し、襖を閉めた。






「……なっ…」

悠輝の言葉にはっとなって
土方は自分の部屋の中を探し回る。



土方の叫び声が
屯所内に響くまで
後、四刻半
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