桜花~君が為に~
「僕は大丈夫なのに
あ、それともそんなに悠輝のことが心配ですか?」
「んなんじゃねぇよ
俺はただ、副長としての任を果たしてるだけだ」
「はいはい、そーでした
仕事が大好きな鬼の副長さん」
肩をすくめて沖田は土方をからかうように笑った。
そして、柱から背を離したかとおもうと
くるりと体を反転させ、今までもたれていた柱に手を付く
「それじゃあ、鬼の副長さんの言う通り
子供達と遊んで、悠輝と茶屋にでも行って来ます」
「……」
沖田の言葉に、土方は眉間の皺をさらに濃くした
本当は、出かけてほしくないのだが、
自分が何を言っても無駄なことを土方はわかっていた
わかっていたからこそ、何もいわない
そんな土方を見ながら
ゆっくりと襖を閉め始める沖田。
「あ、そうそう。土方さん」
「んだよ」
何かを思い出したように、沖田は襖を閉めていた手を止めた。
名前を呼びかけても振り返らない土方を見て沖田は微笑む
そして、それから……
「悠姫はは、僕のです。
手を、出さないでくださいね」
それだけ言って、沖田はふすまを閉めて、部屋を後にした。
一人部屋に残された土方はというと
長く伸びた前髪を右手でかきあげ深いため息をつき
「あいつ…いつから気づいてやがった…?」
珍しく耳まで赤く染めて
そう、呟いた。