桜花~君が為に~
ドンッ
「きゃっ」
「わっ」
廊下を曲がったと同時に
誰かにぶつかった。
――…うぅ、前にもこんな事あった気が…
そう、あの時は原田が抱きとめてくれた
「っと、わりぃ。大丈夫か?
――…て、悠輝?」
あの時と同じように
抱きとめられる。
原田とは違った小さな体
「へい、すけ?」
彼の名を呼ぶと同時に
今までこらえていた涙があふれ出た。
「え、ちょ…悠輝!?」
「ごめ、平助…っ
何でも、ない…からっ…」
涙でぐしゃぐしゃになりながら
悠輝はなんとかそれだけ言葉にして
藤堂から離れようとするが…
「……へいすけ?」
離れようとする悠輝の背に手を回し
藤堂は悠輝をぎゅっと抱きしめた。
「なんで、泣いてんのか理由は聞かない。
でも、泣くのを我慢するな」
「……っ」
彼の不器用な優しさ
そんな優しさにさらに瞳からは涙がこぼれる。
優しく抱きしめる彼
そんな彼の胸にすがり付いて悠輝は泣き続けた。
―――…山南さん。
私は、やっぱり、皆を守りたい
こんなにも優しい人たちを 失いたくない
だから、貴方も生きてください