桜花~君が為に~
第二十話
『ねぇ山南さん
約束ですよ。死ぬ理由を見つけたなんて
絶対
言わないでくださいよ』
1865年 2月
年が明けて早や一ヶ月がたった
暦の上では春でも
今はまだ冬といっていいほどの寒さ
その寒さの中
稽古をする二人の影が地を舞っていた
振り下ろされた木刀を避け
悠輝は中を舞う
その降りる力を利用して土方の手元を柄で叩く
「いっ!!」
土方が痛みに顔をゆがめた瞬間
悠輝の木刀は彼の首筋に突きつけられていた
「俺の…勝ち、ですね」
「……」
勝ち誇ったような顔で言うと
土方は納得いかないと言う様な顔をした
しかし
しばらくすると、落ちた木刀を手にとって肩に乗せ
空いている左手で優しく悠輝の頭を撫でた
「強く、なったな」
「土方さんのおかげですよ」
それにまだまだです。と少し照れたように笑いながら
言葉を付け足した