桜花~君が為に~
くすくすと笑う声が聞こえる
その声に反応して二人が振り返ると
そこには沖田の姿があった
「土方さん、腕が落ちましたね。仕事のし過ぎじゃないですか?」
いつものようにからかうような口調で
沖田は土方に向かって言葉を発した
それから、二人のいる庭が見える位置の縁側に腰を下ろす
「うっせ、黙ってろ」
「まぁ、悠輝が強いから仕方ないと思いますけどね」
土方の言葉を無視して肩を竦めて笑った
そんな沖田の態度に土方はさらに機嫌を悪くし
眉間に皺を深く刻む
「沖田さん!まだ寒いんですから、そんな薄着で外に出ないでください!!」
沖田のもとへとゆっくり歩く土方を追い越し
悠輝はすぐさま駆け寄る
自分の着ていた羽織を脱いで、沖田の肩へとかけた
『大丈夫なのにー』と不貞腐れた沖田に悠輝は『いいからかけててください!』と怒鳴る
そんな二人を少し離れたところから土方が苦く笑いながら見守っていた
微笑ましい風景だった
ずっと、このままでいればいいのにと思うほど
しかし、そんな時は長く続かず
ばたばたと二・三人の五月蝿い足音が響いた
廊下の曲がり角から人影が現れる
人影の正体は
藤堂・永倉・原田の三人だった
「土方さん!大変だ!!!!」
そう藤堂が叫んで
急いで土方のもとへと駆け寄る
「どーしたてめぇら」
「…ん。さ…が」
「は?」
荒くなった息のせいで藤堂の言葉が途切れ途切れになっていて
上手く聞き取ることができなかった
ちょ、まってといってから三人は大きく深呼吸して息を整える