桜花~君が為に~
第二十一話
貴方はとっても 優しい人だから
きっと全て一人で背負い込んで
ずっと ずっと
堪えてきたんですよね
ね?
山南さん
暗い闇の中を二人は走る
優しいあの人を見つけるために
馬は一頭も減っていなかった
歩いて外へでたのだろう
だとしたら、そう遠くまで行っていないはずだ
探さない方がいいのかもしれない
彼のためにも自分のためにも
もし、見つかっても局中法度によって命を失ってしまうのだから
それでも、悠輝は走り続けた
最悪の事態を考えないようにするために 全力で
「…っ」
前を走る沖田が急に足を止めた
それに伴い悠輝も足を止めようとするが
あまりにも急だったため、沖田の背中に突進した
「いっ…たぁ…沖田さん?どうしたんですか、いきなり止まったりして」
勢いよく突進したのにびくともしない沖田に
打った鼻を押さえながら問いかける
振り返った沖田はまるで静かにしてと言うかのように
唇の前に人差し指を当てた
そんな彼の動作に悠輝は首をかしげる