桜花~君が為に~


「声が…聞こえる…」

しばらく沈黙が続いた後、沖田が呟いた
その言葉に悠輝も耳を澄ませてみる
すると…

『…悠……輝』

誰かが自分を呼ぶ声が
細い道の奥から聞こえてきた

「沖田さん」

彼の名を呼ぶと
彼はいつでも抜刀できるように刀の柄に手を掛けて頷く
沖田に習い悠輝も刀の柄に手を掛けた
足跡を立てないように歩きながら二人は並んで奥へと進んだ




「…っ」

辿り着いた先で倒れていた人物に言葉を失った

「山南さんっ!!!!!」


刀の柄から手を離し倒れている人物へと駆け寄った
沖田は、周りに人がいないことを確認してから
紅く染まった山南を涙目で抱えている悠輝のもとへと歩み寄る

「悠。輝…」
「しゃべらないでください!!!
今、失血しますから!!!」

今にも泣きそうな声で叫び
持っていた手ぬぐいを血が溢れ出る傷口へとあてる
白かった手ぬぐいが一瞬にして紅に染まった
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