桜花~君が為に~
「何も話すことがないのなら、僕は行きますね」
沖田だった
冷たく言い放って立ち上がると
閉じている襖に手を掛けようとしたそのとき…
「ゴホッ ゲホッゲホッ」
かけようとしていた手で口をおおい
体を折って激しく咳き込んだ
「総司!!!!」
名を叫んで土方はすぐさま沖田の傍へと駆け寄った
崩れる彼の体を支える
「ゲホッゲホゴホコホッ…だい、ゲホ、じょう…ぶゴホッゲホッです…からっ」
咳き込みながらそう言い放ち
自分の体を支える彼の体を押すが
うまく力が入らず
抱きかかえられるような体勢になりながら
先ほどまで土方が座っていたところまで連れてこられる
土方は懐から薬を取り出すと
先ほど悠輝が用意したが
結局誰も飲むことがなかった茶の一つを手にとり
少し咳が増しになった頃を見計らって薬と共に沖田へと飲ませた
コクンと彼の喉がなるのを確認して
ほっと安堵の息を吐く
「にっ…が…なんですか…この薬」
咳の所為で荒くなった息のまま
沖田は土方へと問いかけた
「俺が調合した薬だ。咳止めの効果がある」
素っ気無く答え
土方は沖田が飲み残した茶を口にした
「風邪うつっても知りませんからね」
「んなにやわじゃねぇよ」
からかうように言った沖田に
土方もふざけたような言葉を返し
二人で声を合わせて笑った