星の夢
 夜の学校の静けさの中、ガタガタと動く扉の音が響きすぎ、いやに耳に残る。朝倉を一人教室に残して佐藤は廊下に出た。どの窓を覗き見ても星は地に落ち毒々しい光を放っている。階段を目指し佐藤は廊下を進んだ。

「佐藤、何してんだよ」

 能天気な声、いつも教室の中心にいるそいつの姿が目に浮かぶ。

「星を見ようと思って」

 星……。そうつぶやいたのが聞こえた。自分でもおかしいとは思っている。

「そっちは屋上だぞ。星見るんだったら視聴覚室行かねえと……」

 こっちだと案内するように腕を引かれた。

「放せっ」

 反射的に腕をつかむ手を振り払い、勢い余ったそいつの体が、小気味良い音を立てて廊下に沈む。

「……ごめん」
 口をついて出た言葉に「俺も強引だった」とほこりを払いながら立ち上がる。

「視聴覚じゃないんだな」

 佐藤は静かにうなずいた。

 今はもう星の見えない、ただ灰色ばかりが広がっている、そんな屋上へ……

「俺もついてって良いか。その……星を見に」

 佐藤は何も言わない。そいつがついてくるのがわかっていた。二人は屋上へ続く階段を進み始めた。
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