空耳此方-ソラミミコナタ-

「いる。絶対います」


あまりに確信に満ちた恵の様子に、言乃は炯斗に囁く。


「タヌキが、とかじゃなくてって意味でとってもいいのでしょうか?」

「……わかんない。そういうのは見える形でちゃんと本人に言いなさい」


そんな二人をよそに恵は一番近く一番大きいと見える洞窟にスタスタと歩み寄った。


「おじいちゃん!!いるんでしょ?」


さながら朝起こしにくる母。

ふて寝してないで早くご飯食べて!遅れるよ!今日ゲートボールの大会でしょ!

とか言ってそうププフ


「どんな想像なんです?ゲートボールって大会あるんですか?」

「知らない。ってえぇ!?」

「………全部口に出てましたよ。幸い、恵ちゃんまで届いてないみたいですが」


かかあ天下の前では暗闇の恐怖も形無しか。
ライトも何もなしに恵は中へ入って行く。

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