空耳此方-ソラミミコナタ-
ずかずか入っていく恵のあとに二人も続く。
入り口は大人二人が並んで丁度、上は4,5mほどに空間が出来ている。
その割には中まではあまり光が差し込まず、最奥はよく見えない。
しかし、そのわずかな光が照らし出す中には先ほどの音のせいであろう様々な道具が散らばっていた。
炯斗は近くに落ちている道具を拾い上げて光に照らす。
「うわぁ、飯盒炊爨(はんごうすいさん)だ!キャンプ以外で初めてみたわ」
恵は中の散らかりように苦笑した。
「それも自前なんですよ。全部そろえて家族で何回がキャンプにも行ったし」
へぇ…と他の道具も物色しようと伸ばした手が、止まった。
そして恵をもう一度見上げ、
「……それここに全部持ってきたっての?」
「ええ。たぶんここで一人で生きてくつもりだったと思う」
炯斗はポッカリ口を開けた。
20歳の孫がいるじいさんが離島で一人で重いキャンプ一式を持って──
なんて、なんて
「なんてサバイバルじいちゃんだよっ!?」
恵は苦笑し頭をかく。
昔から祖父はこうで、彼女にとってはもう当たり前になりつつある。
そんな中で少し思う。
まさか、こんなに驚かれることだとは──