空耳此方-ソラミミコナタ-
所変わって再びあの洞窟。
透はまだおばさんのところから戻っていない。
好都合だ。
あれだけ頑なだった透のことだ。
好き勝手に荒らしているのが見つかったら雷が落ちるかもしれない。
なるべく中もあまり散らかしたくはない。
しかしそんな三人の懸念を撥ね付け克己は中に入っていく。
すぐにひどく興奮した声が中から響いた。
「君たち!来てみなよ!!」
慌てて中に入ると、克己の顔はてかてかと汗ばんでいた。
そして突然炯斗に抱きついた。
「うげっ!!」
「ありがとう君たち!僕が探していたのはこれだったんだ!」
「や、ちょ、待て!離せ!俺にソッチの趣味はない!」
だが克己の耳には入っていない。
バッと炯斗を離して、暗号の刻まれた壁を見つめた。
「僕はずっとこれを…この島で宝探しをしていたんだよ」
解放された炯斗は、言乃の後ろへ隠れるように回った。