空耳此方-ソラミミコナタ-
洞窟にいた四人は一斉に振り返った。
洞窟の入り口あたりに棒立ちになる人物が一人。
逆光で顔はわからないが、大学生たちにはそれが誰かは言うまでもない。
「あーあ…間に合わなかったな」
諦観した炯斗の声がポツリと響いた。
入り口の人物は大股で近づき、中にいる人物が誰かわかるとはたと立ち止まった。
「恵!…と友達の屋代さん、金髪小僧!」
「日奈山炯斗!!何で俺だけ名前覚えてない!」
突然にぎやかになる小さな穴。
置かれたランプが照らし出す顔は、やはり透だった。
「何でここにいる!……ん?奥にいるのは誰だ?」
「ガン無視かよ!?」
透の肩を掴み、ねえちゃんと自己紹介したよな?ボケた訳じゃないよな?と必死の形相で問う。
透は視界の大部分を占める炯斗を押しのけ奥をのぞきこんだ。
途端、透の動きが消えた。
あれ?と炯斗は傍らの透を見る。
「…おじーさん?」
だが彼の瞳には穴の奥しか見えていない。
「……お、お前……克己か…?」
「?……もしかして、透君…透君なのか!?」