空耳此方-ソラミミコナタ-
割り当てられた部屋のベッドに腰かける恵。
彼女にミネラルウォーターを渡し言乃は横に座って恵の顔を伺った。



【大丈夫ですか?】

「うん…色々ごめんね言乃ちゃん」

【そんなことないです】

言乃は小さく息を吐いた。
…全然大丈夫そうじゃないですね…

炯斗に任せろと言わんばかりにこうして来たものの――

会話の手段が手段故に、このような時には、あまりコミュニケーションの取り方が分からない。


――そうだ!!





ガサゴソという音に顔を上げると、言乃が着替え類の入る大荷物を開いていた。

フリーマーケットのように広げ、次々とものが溢れてくる。
それもあまり宿泊に関係のなさそうなものばかり。

何でそんなに沢山…ていうかどこにそんなにいっぱい入ってたの!?

思わず目を丸くして言乃を見つめる。

すると不意に言乃の動きがピタリと止まる。

「言乃ちゃん……?」

言乃はバッとこちらを振り向く。
その速さに恵はビクッとした。


あったー!!とばかりに大きくふる手には、妙な紙切れが握られていた。


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