空耳此方-ソラミミコナタ-
言乃は得意気に紙切れを恵の鼻先に突きつけた。
何かを言いたいのだろうか?
しかし炯斗はいないし携帯はベッドの脇に放置してある。
恵が目をぱちくりしていると、言乃はその紙切れを1枚ずつ備え付けのテーブルに置いていく。
……ますます何がしたいのか分からないよ言乃ちゃん……
言乃は一心に机に向かっていて恵の視線にも気付かない。
紙切れをおき、それで何かの形を作る。
そして1枚1枚を線でつなぐように指をすすめて、始発の紙切れまでくる。
言乃はそこでひとつ息を吸い込み、両手をパン!と合わせた。
その瞬間、部屋の空気が変わった。
どこが、と聞かれると答えられないが、明確に何か変わったとだけ理解出来る。
困惑している恵を真っ直ぐに見つめ、口を開いた。
「……聞こえますか?」
「この声……言乃ちゃん……!?」