空耳此方-ソラミミコナタ-
それから、炯斗は朋恵の伝えに従い女子二人を呼びにやった。
部屋では二人がもう荷物を広げガールズトークに花を咲かせていた。
部屋を開けた瞬間、炯斗は二人に圧倒され、小さく「メシだってさ」としか言えなかった。
「炯斗くん、どうしたんですか?」
階段を下りる間も何かよそよそしい炯斗に言乃が尋ねた。
「いやぁ…邪魔したかなって」
「そんな気遣い出来るんだ、炯斗くん」
「ねぇ恵ちゃん、俺だって紳士だよ?」
恵は聞かないフリをしてふいと顔をそらした。
食堂に入って見るとまばらに人影があった。
昼間と違ってほとんどの客が集まるだろう夕食なのに、客は十人といない。
「うわ人少ねぇ…」
「だから言ったらダメだって…」
昼と同じ場所を選んで三人は席についた。