空耳此方-ソラミミコナタ-


あらかた食事を終えた頃、言乃が携帯を差し出した。

【そういえば、あの後克己さんはどうでした?】

「何か気遣わせちまった感じ…」

「えぇ!?何やってんの?」

「気まずくした張本人がよく言うぜ」

グッと言葉に詰まる恵。
炯斗は数少ない勝利に内心ガッツポーズをした。

言乃は食堂に目を走らせる。
克己は奥の方で一人スープをすすっている。


その時、視界に知った顔を捉えた。

「? ……刑事さん…」

言乃の呟きに炯斗は手を叩いた。

「そうそう! ここにともちー来てんの! 驚きじゃね?」

「誰?」

朋恵を知らない恵は首を傾げる。
炯斗が簡単に朋恵との関係を説明すると、恵は目を輝かせた。

「刑事さんと知り合いなんてスゴいね!! 後でその事件のこと教えてね、ことのん ……聞いてる?」

【すみません】

文面で謝るものの言乃は上の空だった。
そして炯斗に耳打ちする。

「克己さんの横に立っている方は誰でしょうか?」

「ん?」


炯斗も目を克己に向けた。

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